その「無茶振り」、法律違反かもしれません
「来週の検査に間に合わせたいから、土日も休まずやってくれ」「他社が断った工期だけど、お宅ならできるやろ?」
大阪・関西万博の関連工事や、人手不足による工期遅れの影響で、大阪市の建設現場でも、こうした「無茶な工期短縮」を強いられるケースが増えています。「元請けの言うことには逆らえない…」と、残業や休日出勤でカバーしている親方も多いでしょう。
しかし、2024年(令和6年)に改正され、順次施行されている新しい建設業法では、「著しく短い工期の契約」が明確に禁止されました。これは、弱い立場の下請け業者を守り、長時間労働を是正するための強力なルールです。
この記事では、大阪の小規模事業者が知っておくべき「工期」のルールと、元請けにNOと言うための知識を解説します。
1. 法改正のポイント:「お願い」ではなく「禁止」へ
これまでの法律でも「適正な工期の確保」は努力義務とされてきましたが、今回の改正で「注文者(元請け)の禁止行為」として明記されました。
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改正内容: 注文者(元請け)は、建設業者(下請け)に対し、通常必要と認められる期間に比して「著しく短い期間」を工期とする請負契約を締結してはならない。
つまり、元請けが「どうしても急いでくれ」と言って無理な契約書にハンコを押させること自体が、建設業法違反になります。
2. 何をもって「著しく短い」とするのか?
「短い」の基準は曖昧ですが、国土交通省のガイドラインでは以下のようなケースが違反の恐れありとされます。
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過去の同種類似工事の実績との比較
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過去の同じような工事と比較して著しく短い工程を組むこと。
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自然条件や実態を無視した工期
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雨天や養生期間(コンクリートが固まる時間など)を考慮せず、物理的に不可能な日程を組むこと。
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一方的な変更
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当初の契約から、下請けとの協議なしに工期を短縮すること。
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大阪府でも、これらに違反する契約が発覚した場合、行政指導の対象となります。
3. 違反した場合のペナルティ
もしも、元請け業者がこのルールを破って無理な工期を押し付けた場合、どうなるのでしょうか?
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国土交通大臣や知事からの「勧告」や「公表」
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違反した元請け業者の名前が世間に公表されるリスクがあります。これは企業にとって致命的なダメージとなります。
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業務改善命令・営業停止処分
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悪質な場合、許可行政庁から重い処分が下されます。
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この罰則があるため、今、大手ゼネコンやハウスメーカーは「工期の適正化」に非常に神経質になっています。下請けである皆様にとっても、交渉しやすい環境が整いつつあります。
4. 小規模事業者が身を守るためにやるべきこと
法律があっても、現場で声を上げるのは勇気がいります。どうすればいいのでしょうか?
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① 契約書(注文書)を必ず交わす
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口約束での「大至急」が一番危険です。必ず書面で工期を確認しましょう。
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② 「見積条件」に工期を明記する
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見積書を出す際、「この金額は、週休2日・実働〇日を前提としています」と条件を書き添えることが重要です。
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③ 専門家に相談する
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「これって違法じゃないか?」と思ったら、ハンコを押す前に当事務所等にご相談ください。契約内容をリーガルチェックし、元請けへの上手な伝え方をアドバイスします。
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5. まとめ:法律を味方につけて、職人を守ろう
「著しく短い工期」の禁止は、あなた自身だけでなく、あなたの下で働く職人や家族を守るための法律です。無理な工事は事故のもとであり、品質低下の原因にもなります。
「断ったら仕事がなくなる」と恐れる時代から、「法令順守できない元請けはリスクが高い」と判断する時代へ。旭区・森小路の暁行政書士事務所は、法務の知識で小規模事業者の経営を守ります。
この記事によくあるQ&A(よくある質問)

Q1. 施主(お客様)からの要望で工期を短くする場合は違反になりませんか?

A. 施主が個人の場合、建設業法の直接の対象ではありませんが、元請け業者は施主に対し「その工期では適正な施工ができない」と説明する義務があります。もしも、元請けが施主の言いなりになって、下請けに無理な工期を押し付けた場合、元請け業者が建設業法違反に問われる可能性があります。

Q2. 「著しく短い」かどうか、具体的な日数の基準はありますか?

A. 法律で「〇日以下は違法」という一律の数字はありません。工事の種類や規模によって異なるためです。しかし、「過去の同種工事の実績」や「標準的な作業効率」と比較して、明らかに無理がある場合(例:通常1ヶ月かかる工程を1週間でやれ、など)は違反とみなされます。

Q3. 元請けに違反を指摘したら、今後の取引を切られそうで怖いです。

A. その懸念はもっともです。だからこそ、正面から「違法ですよ!」と喧嘩腰になるのではなく、「見積もりの前提条件」として冷静に提示したり、「働き方改革で行政の指導が厳しくなっているので…」と法律を盾にやんわり交渉するテクニックが必要です。当事務所では、角を立てずに交渉するためのアドバイスも行っています。



