【都市部特有】借地権付きの古い実家を相続。地主への更地返還費用が払えない時の対策

都市部で多発する「借地権」の相続トラブル
都市部の下町エリアや住宅密集地の実家を相続した際、実はその土地が親の持ち物ではなく、地主から借りている「借地」であったと判明するケースが非常に多く見られます。
国税庁の定義によれば、借地権とは「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」を指し、これも立派な相続税の課税対象となる財産です。
(参考データ出典:国税庁「No.4611 借地権の評価」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4611.htm )
しかし、親が建てた古い家を相続人が引き継ぐ際、地主との間でトラブルが発生することがあります。誰も住まない実家を手放そうとしたところ、地主から「更地にして返してほしい」と要求され、数百万円の解体費用が払えないという深刻なご相談です。本記事では、更地返還費用の支払いが困難な相続人に向け、莫大な負債を回避するための借地権売却や法的整理の道筋を解説します。
借地権相続の落とし穴:「更地返還義務」と「解体費用」の壁
借地の上に建っている建物を手放して土地を地主へ返す場合、原則として借り主には「原状回復義務」が生じます。つまり、建物をすべて解体し、綺麗な「更地」にして返還しなければなりません。
都市部の場合、道路が狭く重機が入れないなどの理由で、一般的な一戸建ての解体費用が200万円〜300万円、あるいはそれ以上に跳ね上がるケースがあります。「家はいらないから土地をそのまま返したい」と地主に伝えても、地主側も老朽化した建物をタダで引き取るメリットがないため、「更地返還費用が払えないなら、地代を払い続けろ」という膠着状態に陥ってしまいます。
また、相続した途端に地主から「名義書換料」や「法外な更新料」を請求されることもあり、資金力のない相続人にとっては、まさに逃げ場のない「負債」となってしまいます。
対策1:借地権の「売却交渉」で解体費用の持ち出しを防ぐ
解体費用が払えない場合の第一の解決策は、更地にして返すのではなく、「借地権(建物と、土地を借りる権利)」をそのまま売却することです。
- 地主への買い取り交渉:最も円満な解決方法は、地主に対して「借地権と建物を買い取ってもらう(あるいはタダでも良いので引き取ってもらう)」交渉を行うことです。地主にとっても、完全な所有権(底地+借地権)を取り戻すことで土地の資産価値が上がるというメリットがあるため、交渉の余地があります。
- 第三者への売却(借地権付き建物としての売却):地主が買い取りを拒否した場合、第三者への売却を模索します。ただし、第三者へ借地権を譲渡するには「地主の承諾」と「承諾料(譲渡承諾料)」の支払いが必要になる場合があります。地主が不当に承諾を拒む場合は、裁判所へ「地主の承諾に代わる許可」を求める法的手続き(借地非訟事件)を行うことも可能です。
対策2:「相続放棄」による法的整理(タイムリミットに注意)
「地主との交渉がまとまらない」「第三者への売却価値もなく、解体費用ばかりがかかる」という最悪の状況で、借地権が完全なる「負債」となっている場合は、「相続放棄」という法的整理を選択することになります。
- 相続放棄の判断基準:親の預貯金などのプラスの財産よりも、今後の地代の支払いや更地返還に伴う解体費用のマイナス面が上回る場合は、相続放棄が有効です。
- 注意点:相続放棄は「自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。ただし、相続放棄をしても、次の管理者に引き継ぐまでは建物の管理責任が残る点には注意が必要です。
地主とのトラブル・法的整理は地域の専門家へ
借地権の相続トラブルは、当事者同士で直接話し合うと感情的になりやすく、「言った・言わない」の泥沼の争いに発展しがちです。
都市部の地域に根差した当事務所では、複雑な借地権の相続における遺産分割協議書の作成はもちろん、信頼できる弁護士や司法書士、借地権に強い不動産業者と連携し、地主との交渉に向けた法的整理の道筋をワンストップでサポートいたします。地主からの過大な請求や、更地返還の重圧にお悩みの方は、取り返しのつかない事態になる前にぜひお早めにご相談ください。
FAQ(この記事によくある質問と回答)
Q. 地主から「相続したのだから名義書換料(承諾料)を払え。払わないなら出ていけ」と言われました。払う必要はありますか?
A. 相続によって借地権を引き継ぐ場合、法律上「名義書換料」や「承諾料」を支払う義務はありません。相続は通常の売買(譲渡)とは異なり、地主の承諾を得ることなく権利が移転するからです。ただし、今後の円滑な関係維持のために少額の挨拶料として支払う慣例もあります。地主の要求が過大な場合は、安易に支払わずに専門家へご相談ください。
Q. 解体費用が払えないので、建物だけ放置して逃げることはできますか?
A. 勝手に建物を放置して逃げることはできません。地主との借地契約は相続人に引き継がれているため、地代の未払いが続けば裁判を起こされ、最終的にご自身の財産(給与や預金など)が差し押さえられるリスクがあります。放置せず、借地権の売却や相続放棄など、適切な法的整理を行う必要があります。

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