相続した老朽化アパート(文化住宅)の立ち退き・解体と遺言による生前対策の重要性

大阪をはじめとする関西特有の「文化住宅」や、築年数の古い木造の老朽化アパート。長年、オーナーであるご自身の生活を支えてきた大切な資産であっても、そのままの状態で次世代へ相続させることは、ご家族にとって想像を絶する重荷となる危険性をはらんでいます。
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家数は過去最多の約900万戸に達しており、特に木造の古い賃貸住宅の老朽化と空き家問題は深刻な社会的課題となっています。(参考データ出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/ )
「家賃収入よりも、毎年の修繕費や固定資産税の方が高くついている」「台風や地震で倒壊しないか心配だ」という状態であれば、そのアパートはすでに資産ではなく「負動産」になりつつあります。本記事では、入居者が残っている老朽化アパートをめぐる相続時のリスクと、ご家族を守るためにオーナーが生前に行うべき法的整理(遺言や家族信託)について、行政書士が詳しく解説します。
ご家族を苦しめる「立ち退き交渉」と「倒壊リスク」の壁
何の対策もせずにオーナーが亡くなり、ご家族(配偶者や子ども)が老朽化アパートを相続した場合、ご家族は自動的に「新しい大家(賃貸人)」としての重い責任を引き継ぐことになります。ここで直面するのが、以下の2つの大きな壁です。
1. 困難を極める「立ち退き交渉」
建物を解体・売却するためには、現在住んでいる入居者全員に退去してもらわなければなりません。しかし、日本の法律(借地借家法)は入居者の権利を非常に強く守っており、単に「建物が古いから」「大家が代替わりしたから」という理由だけですぐに退去させることは不可能です。立ち退きには、貸主側の「正当事由」に加え、高額な立ち退き料(引っ越し費用や慰謝料相当額)の支払い交渉が必要になることが多く、不動産管理の経験がないご遺族にとって、精神的にも金銭的にも多大な負担となります。
2. 民法上の「土地工作物責任(倒壊リスク)」
老朽化したアパートを放置し、万が一台風や地震で屋根や外壁が崩れ、通行人に怪我をさせたり隣の家を壊したりした場合、民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)により、所有者であるご家族が莫大な損害賠償責任を負う可能性があります。「相続しただけで何も手をつけていなかった」という言い訳は通用しません。
対策1:遺言書での「換価分割」指定と、権限を明記した「遺言執行者」の選任
このような事態を防ぐため、オーナー様が元気なうちに「遺言書」を作成し、死後の法的整理の道筋を明確に定めておくことが不可欠です。
老朽化アパートの場合、「建物をそのまま長男に相続させる」といった単純な指定ではなく、アパートを売却して現金化し、その現金を分ける「換価分割(かんかぶんかつ)」を指定することが有効です。 しかし、ここで非常に重要な法的注意点があります。単に「換価分割とする」と書き、専門家を遺言執行者に指定しただけでは、遺言執行者に「入居者を退去させる権限」や「建物を解体する権限」があるとはいえず、手続きが行き詰まってしまう場合があります。(オーナーチェンジ物件として売却することはできます)
ご家族に代わって遺言執行者がスムーズに動くためには、遺言書の中に「建物の解体工事に関する契約を締結する権限」など、内容にそった具体的な条項を明記しておく必要があります。この緻密な遺言書があって初めて、ご家族が入居者と直接顔を合わせてお願いに回る負担をなくし、専門家が中心となって(立ち退きの合意交渉等は弁護士と連携しながら)複雑な手続きを主導することが可能になります。
対策2:生前に解決を図る「家族信託」の活用
立ち退き交渉には、数ヶ月から数年の長い時間がかかるのが一般的です。もしも、交渉の途中でオーナー様が認知症を発症してしまうと、意思能力がないとみなされ、立ち退きの合意契約や解体工事の契約、不動産の売却手続きが一切できなくなり、アパートが塩漬けになってしまいます。
そこで、遺言書と並んで極めて有効な対策が「民事信託(みんじしんたく)」です。オーナー様が元気なうちに、信頼できるお子様(受託者)との間で信託契約を結び、アパートの「管理・処分権限」をお子様に移しておきます。
- 家族信託のメリット:権利を移されたお子様は、オーナー様がご存命のうちから「大家の代行」として堂々と立ち退き交渉を進めることができます。万が一、オーナー様が認知症になった後でも、お子様の判断と権限でアパートを解体し、更地にして売却することが可能です(売却して得たお金は、オーナー様の生活費や介護費用のために使われます)。
老朽化アパートの相続対策は、暁行政書士事務所へ
「うちの文化住宅は古いけれど、昔からの馴染みの賃借人さんがいるから、自分が生きているうちは追い出したくない。でも子どもには迷惑をかけたくない」このような複雑な親心をお持ちのオーナー様はたくさんいらっしゃいます。
大阪市旭区・千林大宮駅周辺に拠点を置く「暁(あかつき)行政書士事務所」では、オーナー様のお気持ちに寄り添いながら、ご家族へ負動産のツケを残さないための「遺言書の作成」や「家族信託の設計」をトータルでサポートいたします。必要に応じて信頼できる弁護士、司法書士、税理士や解体業者、不動産会社とも連携し、ワンストップで解決への道筋をご提案いたします。建物の老朽化は待ってくれません。取り返しがつかなくなる前に、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。
FAQ(この記事によくある質問と回答)
Q. 遺言書で「アパートを取り壊す」と書いておけば、入居者はすぐに出ていってくれますか?
A. 遺言書があるからといって、借地借家法で守られている入居者を強制的に退去させることはできません。立ち退きには貸主側の「正当事由」と立退料の支払い等を伴う交渉が必要です。だからこそ、死後の手続きを円滑に進めるための「遺言執行者(専門家)」の指定や、生前から準備を進められる「家族信託」の活用が重要になります。
Q. 立ち退き交渉自体を行政書士に代行してもらうことはできますか?
A. 行政書士は、遺言書の作成や家族信託の契約書作成など「法的スキームの構築」や、立ち退き合意後の「解約合意書の作成」は行えますが、入居者と直接「立ち退き料の金額交渉(紛争性のある交渉)」を行うことは弁護士法違反となるためできません。当事務所では、交渉が必要になった段階で信頼できる弁護士をスムーズにご紹介し、チーム体制でご家族をサポートいたします。

当事務所では、相続や遺言書についてサポートを行っております。
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