「相続放棄」と「相続土地国庫帰属制度」はどちらがお得?メリット・デメリット徹底比較

増え続ける「負動産」と手放すための2つの選択肢
親から実家や土地を相続する際、利用価値がなく、固定資産税や管理の手間ばかりがかかる「負動産」の扱いに悩む方が急増しています。
裁判所の「司法統計」によると、令和4年(2022年)の「相続放棄」の受理件数は年間約26万件に達しており、過去最多を更新し続けています。多くの方が「いらない財産を引き継ぎたくない」と法的な手続きを選択していることがわかります。
(参考データ出典:裁判所「令和4年 司法統計年報概要版(家事編) (PDF:493KB) 最高裁判所」 https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12671.pdf )
維持費ばかりかかる負動産を手放すための代表的な手段として、従来からある「相続放棄」と、2023年に新設された「相続土地国庫帰属制度」の2つが挙げられます。本記事では、これら2つの制度の違いや比較、メリット・デメリットを徹底解説し、あなたにとってどちらが最適な選択なのかを行政書士が分かりやすく指南します。
根本的な違い:「一部だけいらない」が通用するかどうか
この2つの制度を比較する上で、最も重要な「違い」は手放せる財産の範囲です。
相続放棄の落とし穴:「全財産」を手放さなければならない
相続放棄は、家庭裁判所に申し立てることで「初めから相続人ではなかったこと」になる強力な手続きです。しかし、最大のデメリットは「一部の土地だけいらない」場合は相続放棄ができない(全財産放棄になる)という法的基本構造にあります。
つまり、「田舎の荒れ地(負動産)はいらないけれど、親の預貯金1,000万円と、今自分が住んでいる実家は相続したい」という「いいとこ取り」は法律上認められません。負動産を手放す代償として、プラスの財産もすべて諦めなければならないのです。
相続土地国庫帰属制度:「特定の土地だけ」を手放せる唯一の手段
一方、2023年(令和5年)4月27日にスタートした「相続土地国庫帰属制度」は、相続によって取得したものの、利用予定のない土地(負動産)を国(国庫)に引き取ってもらえる画期的な制度です。
この制度の最大のメリットは、預貯金や優良な不動産はしっかりと相続した上で、特定の不動産だけを手放したい場合の唯一の手段として国庫帰属制度を位置づけることができる点にあります。
メリット・デメリット徹底比較表
それぞれの特徴を比較表で整理しました。
| 比較項目 | 相続放棄 | 相続土地国庫帰属制度 |
| 対象となる財産 | すべての財産(プラスもマイナスも) | 特定の土地のみ(ピンポイントで選択可) |
| 手放せるタイミング | 相続発生を知ってから「3ヶ月以内」 | 期限なし(過去の相続分でも申請可能) |
| 国(裁判所)の要件審査 | 比較的緩い(書類の不備等がなければ受理) | 極めて厳格(現地調査などがある) |
| 建物がある土地の扱い | そのまま放棄可能 | 不可(更地に解体する必要あり) |
| 手続きにかかる費用 | 安価(数千円の印紙代など) | 高額(審査手数料14,000円+負担金20万円〜) |
要注意!国庫帰属制度は「無条件」ではない
「一部だけ手放せるなら、絶対に国庫帰属制度のほうがお得だ」と安易に決めるのは危険です。国庫帰属制度を利用するためには、「建物がない更地であること」「境界が明確であること」「土壌汚染や埋設物がないこと」「担保権が設定されていないこと」など極めて厳格な要件が課されています。
もしも、実家が建ったままであれば、数百万円かけて家屋を解体し、隣の土地との境界線を確認する測量を行わなければ、国は申請を受け付けてくれません。
つまり、「プラスの財産」がどれくらいあるかと、「国庫帰属させるための事前準備(解体費など)+負担金」の総額を天秤にかけ、総合的にどちらが得かをシミュレーションする必要があるのです。
負動産の処分でお悩みなら、まずは行政書士へご相談を
「自分のケースでは、相続放棄と国庫帰属制度のどちらを選ぶべきか分からない」という方は、自己判断で動く前に必ず専門家へご相談ください。相続放棄には「3ヶ月以内」という厳しいタイムリミットがあるため、迷っている時間は長くありません。
当事務所では、戸籍の収集から財産目録の作成、そして各制度の費用対効果のシミュレーションまでをサポートいたします。お客様の状況に合わせ、最適な「負動産の出口戦略」をご提案しますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
FAQ(この記事によくある質問と回答)
Q. 数年前にすでに相続税を払い、自分の名義にしてしまった土地でも国庫帰属制度は使えますか?
A. はい、使えます。相続放棄は「相続を知ってから3ヶ月以内」しかできませんが、相続土地国庫帰属制度は「相続や遺贈によって取得した土地」であれば、何年前に相続したものであっても申請の対象となります。
Q. 亡くなった親に多額の借金があり、いらない土地もあります。この場合はどちらが良いですか?
A. 親に多額の借金(マイナスの財産)がある場合は、「相続放棄」を選択するのが基本です。相続放棄をすれば、借金もいらない土地もすべて手放すことができます。ただし、放棄後も次の管理者が決まるまでは土地の管理責任が残る場合があるため、専門家への相談を推奨します。

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