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仲の良い友人に財産を譲りたい!「遺贈」という選択肢とは

仲の良い友人に財産を譲りたい!「遺贈」という選択肢とは

大阪市旭区にお住まいの皆様、こんにちは。行政書士の兼頭です。

「疎遠な親戚よりも、長年支え合ってきた親友に財産を渡したい」「籍は入れていないけれど、事実婚のパートナーに家を残したい」「ずっと面倒を見てくれた近所の恩人に、お礼がしたい」

少子高齢化や核家族化が進む今、こうしたご相談が非常に増えています。しかし、日本の法律(民法)では、「友人」や「内縁のパートナー」には、相続権が一切ありません。

何も対策をしなければ、あなたの財産は会ったこともない遠い親戚のものになるか、国へ没収されてしまいます。そこで今回は、血縁関係のない大切な人に財産を渡す方法「遺贈(いぞう)」について、データや注意点を交えて解説します。

目次

1. データで見る|単身高齢者と“友人・近隣”の存在感

「財産は家族だけに残すもの」というのは、もはや古い常識になりつつあるのかもしれません。内閣府が行った意識調査や民間調査から、単身高齢者にとっての“友人・近隣”の存在感をみてみます。

会話・つながりの実態(公的調査より)

内閣府が行った「一人暮らし高齢者に関する意識調査」では、65歳以上の単身高齢者について次のような結果が示されています。

・普段の会話相手
近所の人:約50%
友だち:約46%
子ども:約42%
兄弟姉妹・親戚:約27%

日常的な関わりでは、友人や近隣の人が家族を上回る項目もあることが分かります。
※「相談相手=相続先」ではありませんが、「生活を支えている存在」が誰なのかを示す重要な参考データです。

遺贈の認知と関心の高さ

民間調査ではありますが、社会的に信頼性の高い大規模調査として、次のような結果があります。
・70代の約8割が「遺贈」という言葉を知っている
・高齢世代の約半数が「遺贈も選択肢として考えたことがある」と回答

また、日本承継寄付協会の白書では、法定相続人以外へ財産を遺す「遺贈寄付」件数が10年で約3倍に増加しています。
「家族だけに遺す」から、「自分が大切にしてきた人・考えに遺す」へ価値観が少しずつ変化していることが読み取れます。

2. 「遺贈(いぞう)」とは何か?

「遺贈」とは、遺言書によって、法定相続人以外の人(友人、内縁の妻、世話になった人、団体など)に財産を無償で譲ることを指します。

口約束で「君にあげるよ」と言っても、法的な効力はゼロです。ご本人が亡くなった瞬間、その財産は「法定相続人」の権利となるため、ご友人が「約束したから」と主張しても、通帳一つ持ち出すことはできません。
(”死因贈与契約を口頭で結んでいる”となれば話は変わりますが、また違った問題点がありますので、これについては、また別の機会に・・・。)

「遺言書」という形にして初めて、法定相続人以外の誰かへ財産を渡すことが可能になります。

3. 友人に渡す際の「2つの方法」

遺贈には、大きく分けて2つの方法があります。どちらを選ぶかで、受け取るご友人の負担が変わります。

① 特定遺贈(とくていいぞう)|おすすめ!


「〇〇銀行の預金100万円を、友人Aに遺贈する」「旭区〇〇の不動産を、友人Bに遺贈する」このように、「具体的に何をあげるか」を指定する方法です。受け取る側(受遺者)は、指定された財産だけをもらえるので、もしあなたに借金があっても、それを背負う必要がありません。手続きも比較的スムーズです。

② 包括遺贈(ほうかついぞう)


「全財産の2分の1を、友人Aに遺贈する」このように、「割合」で指定する方法です。これは注意が必要です。なぜなら、プラスの財産だけでなく、借金などの「マイナスの財産」もその割合分だけ引き継いでしまうからです。また、他の相続人との遺産分割協議に参加しなければならず、ご友人に大きな精神的負担をかける可能性があります。

基本的には、ご友人に負担の少ない「特定遺贈」をお勧めします。
ご友人などの法定相続人以外へ遺贈する場合は、特別なご事情がない限り予めお話しておくこともお勧めします。

4. 知っておくべき「3つのリスク」と対策

「よし、遺言書を書こう!」と思われた方、少しお待ちください。家族以外への遺贈には、特有の注意点があります。これを知らずに書くと、かえってご友人を苦しめることになります。

リスク①:相続税が「2割増し」になる


配偶者や子供、親が受け取る場合と違い、兄弟姉妹や友人、内縁のパートナーが財産を受け取る場合、相続税額が2割加算(1.2倍)されます。基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える財産がある場合は、税金の支払い分も考慮して現金を残すなどの配慮が必要です。

リスク②:家族から「遺留分」を請求される


あなたに配偶者や子供、親がいる場合、彼らには「遺留分(最低限の取り分)」があります。「家族には一銭もやらず、友人に全財産を」という遺言を書くと、後で家族が友人を訴え(遺留分侵害額請求)、トラブルに巻き込む恐れがあります。(※兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹のみの場合は全額友人に渡しても問題ありません)

リスク③:手続きをする人(執行者)がいないと動けない


遺言書があっても、実際に銀行へ行って解約したり、法務局で登記したりする人が必要です。これを「遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)」と言います。遺言書の中で、行政書士などの専門家を執行者に指定しておかないと、ご友人が単独で手続きしようとしても、銀行窓口で「法定相続人全員のハンコをもらってきてください」と言われ、立ち往生してしまいます。

5. まとめ|「ありがとう」を形にするために

大切なご友人に財産を譲ることは、素晴らしい「終活」の一つです。しかし、それは同時に、法的なルールを厳格に守らなければ実現しない、デリケートな行為でもあります。
「良かれと思って残した遺言が、友人と親族の争いの火種になった」そんな悲しい結末を避けるために、必ず専門家にご相談ください。

当事務所では、大阪市旭区エリアを中心に、
・ご友人の負担にならない遺言の書き方
・遺留分を考慮した財産配分
・遺言執行者への就任

これらをトータルでサポートいたします。「血の繋がり」よりも「心の繋がり」を大切にしたい方。その想いを、私たちが「形(公正証書遺言)」にします。

この記事に関連するFAQ

Q1. 友人に遺贈する場合、その友人の承諾は必要ですか?


A. 作成時は不要ですが、事前に伝えておくべきです。 遺言書は単独行為なので、勝手に書くことは可能です。しかし、亡くなった後に知らされた友人が「迷惑だ」「いらない」と思えば、受け取りを放棄することができます。せっかくの想いを無駄にしないよう、事前に話し合っておくことを強くお勧めします。

Q2. 遺贈したい友人が、私より先に亡くなったらどうなりますか?


A. その部分は無効になります。 遺言書で指定した相手が、自分より先に(または同時に)亡くなった場合、その条項は無効となり、財産は法定相続人に戻ってしまいます。これを防ぐためには、「もしも友人Aが先に他界していた場合は、友人Bに遺贈する」といった「予備的遺言」を書いておくことも可能です。

Q3.ペットに財産を残すことはできますか?


A. 直接はできませんが、方法はあります。法律上、ペットは「モノ」扱いなので財産を持てません。しかし、「ペットの世話をしてくれることを条件に、新しい飼い主(友人など)に財産を渡す」という「負担付遺贈」や財産を託した友人にペットの世話してもらう「民事信託」という方法があります。この場合も、きちんと世話をしているか監督する人(遺言執行者や信託監督人など)を決めておくことが大切です。

【大阪市旭区の暁行政書士事務所】

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代表への直通電話:090-9970-2321
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