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おひとり様の遺言

伯母・叔父の介護をしている甥・姪は遺産をもらえる?「特別寄与料」と遺言の重要性

伯母・叔父の介護をしている甥・姪は遺産をもらえる?「特別寄与料」と遺言の重要性

「生涯独身だった伯母の介護を何年も続けているが、私の親(伯母の兄弟)が健在なため、私には相続権がないらしい」「叔父の通院の付き添いや身の回りの世話を一人でこなしているのに、疎遠な他の親族に遺産が渡るのは納得がいかない」

生涯未婚率の上昇により、おひとりさまで老後を迎える方が増加しています。厚生労働省の「令和4年 国民生活基礎調査」によると、65歳以上の人がいる世帯のうち「単独世帯(一人暮らし)」は全体の31.8%に達しており、その介護や生活支援の多くを「甥(おい)」や「姪(めい)」といった親族が担うケースが増えています。(参考データ出典:厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html )

しかし、日本の民法では、甥や姪の親(被相続人の兄弟姉妹)が存命である場合、甥や姪は法定相続人ではありません。どれほど献身的に介護を尽くしても、そのままでは遺産を受け取ることができないという大きな法的リスクが存在します。本記事では、介護の苦労が報われない事態を防ぐための制度「特別寄与料」の実態と、生前に対策すべき「遺言書の重要性」について行政書士が解説します。

甥・姪を救済する新制度「特別寄与料」とは?

かつての法律では、相続人ではない親族(息子の妻や、法定相続人ではない甥・姪など)が被相続人の介護を長年行っていたとしても、遺産を請求する権利がありませんでした。この不公平を解消するため、「特別寄与料(とくべつきよりょう)」という新しい制度が、2018年(平成30年)の民法の改正によって新たに設けられ、2019年(令和元年)7月に施行されました。

これにより、無償で被相続人の療養看護や介護を行い、財産の維持または増加に特別の貢献をした親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)は、法定相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できる権利が法的に認められました。甥や姪は「3親等内の血族」にあたるため、この制度の対象となります。また、配偶者の甥や姪は、「3親等内の姻族」にあたるので、こちらも対象となります。

請求を阻む「3つの高すぎるハードル」と法的リスク

「法律ができたなら、介護をした分のお金は確実にもらえる」と安心することはできません。実務において、甥や姪が遺言書なしにこの特別寄与料を請求し、実際に金銭を受け取るまでには、高いハードルが立ちはだかります。

1. 「特別な貢献」の証明義務

単に「週末に実家へ顔を出して掃除をした」「買い物を手伝った」程度の援助では、法的な特別寄与としては認められません。例えば「甥がヘルパーの代わりに無償で毎日排泄・入浴介助を行ったことで、本来発生するはずだった高額な介護サービス費用を免れ、遺産の減少を防いだ」といった、財産への直接的な貢献を客観的証拠(長期間の介護日誌、医療記録、交通費の領収書など)で証明する必要があります。

2. 疎遠な法定相続人との直接交渉による極度なストレス

特別寄与料は、国や役所が自動的に振り込んでくれるものではありません。甥や姪自身が、法定相続人(伯母・叔父の兄弟姉妹など)全員に対して「私はこれだけ介護をしたのだから、寄与料を支払ってほしい」と直接協議する必要があります。介護に一切参加しなかった親族に対し、遺産の取り分を減らすような交渉を行うため、感情的な対立は避けられません。当事者同士で話がまとまらなければ、家庭裁判所での調停や審判に発展し、多大な時間と弁護士費用、精神的苦痛を伴います。

3. 「知ってから6ヶ月」という厳しいタイムリミット

特別寄与料の請求には、「相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内」または「相続開始の時から1年以内」に行う必要があります。四十九日の法要が終わり、少し落ち着いてから調べ始めた場合、手遅れになる恐れがあります。

確実な恩返しは「遺言書の作成」でしか実現できない

甥や姪へ確実に財産を残し、無用な親族間トラブルを防ぐための解決策は、伯母・叔父様が元気なうちに「全財産(あるいは特定の財産)を甥・姪に遺贈する」という遺言書を作成しておくことです。

遺言書を作成すべき決定的な理由は以下の通りです。

  • 遺留分の心配が一切ない:亡くなった方の兄弟姉妹には、法律上「遺留分(最低限保障された遺産の取り分)」がありません。そのため、遺言書さえあれば、他の兄弟姉妹は遺産の分割に一切口出しできなくなり、甥・姪へ100%確実に財産を渡すことができます。
  • 遺言執行者の指定で交渉をゼロに:遺言書の中で行政書士などの専門家を「遺言執行者」に指定しておけば、専門家が単独で不動産の名義変更や預金解約の手続きを進めます。甥や姪が他の親族と連絡を取ったり、ハンコをもらって回ったりする負担を無くすことができます。

特別寄与料はあくまで「遺言書がなかった場合の最終手段」に過ぎません。ご本人の明確な意思を法的効力のある遺言書として残すことが、最後まで寄り添ってくれた甥や姪を守る最良の方法といえます。

遺言・相続のご相談は「暁行政書士事務所」へ

「自分が死んだ後、面倒を見てくれた姪が他の兄弟から責められないか心配だ」「叔父に遺言書を書いてもらいたいが、どう切り出し、どのような文面にすれば法的に確実なのか分からない」

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FAQ(この記事によくある質問と回答)

Q. 伯母の通院の送迎や、週に数回の買い物・掃除を手伝っています。これでも特別寄与料は認められますか?

A. 残念ながら、その程度では特別寄与料として認められない可能性が極めて高いです。家庭裁判所の実務上、寄与料が認められるのは「本来であれば有料のヘルパーや施設を利用しなければならないほどの重度の要介護状態において、親族が無償で長期間フルタイムに近い介護を行い、明確に遺産の減少を防いだ」と証明できるケースに限られ、非常に高いハードルが設定されています。

Q. 叔父が「財産はお前に全部やる」と口頭で言ってくれていますが、これではダメでしょうか?

A. 口頭での約束は、法律上の「遺言」としては無効です。叔父様が亡くなった後、他の法定相続人(叔父様の兄弟姉妹など)が「そんな話は聞いていない」「法律通りに分けるべきだ」と主張すれば、ご相談者様は一銭も受け取れなくなるリスクがあります。ご意思を確実に実現するためには、必ず書面(最も確実なのは公証役場で作成する公正証書遺言)として残しておく必要があります。

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